川岸 正典×馬場 佑真 |対談|和光会グループ|岐阜

施設同士の連携に、大きな一歩を踏み出した小児リハビリテーションとこども園。
連携の先にある子どもたちの新たな可能性や、そこで生まれる保護者との信頼関係について考える。

  • 川岸 正典

    山田病院 小児リハビリテーション(理学療法士)

  • 馬場 佑真

    沖ノ橋認定こども園 主幹(保育教諭)

  • 川岸 正典

    山田病院 小児リハビリテーション(理学療法士)

  • 馬場 佑真

    沖ノ橋認定こども園 主幹(保育教諭)

それぞれの職場について
「子どもたちの“楽しい!”を見つけ出す、専門職としての共通点」

川岸さん
まずは小児リハビリのご紹介も含めてお話をさせていただきます。

山田病院のリハビリに通っている子どもたちは0歳から始まり、年齢の上限は特にありません。当院には脳性麻痺、発達障がいなど障がいがある子だけでなく、明確な診断はないけれど歩くのが遅いお子さんなども通われています。年齢層としては年中・年長さんが多いです。そういったところでも、こども園にいる園児と年齢が近かったりしますよね。
馬場さん
こども園は0歳から小学校就学前までのお子さんが対象ですから、まさにそうですね。
僕らの場合は子どもたちを集団でみますが、基本的な保育の考え方としては「個に応じる」という考え方をすごく大切にしています。

集団の中の一人ではなくて、一人ひとりのその子の存在に価値があるという姿勢です。子どもたちの課題はみんなばらばらなんですよね。そういう意味では、それぞれの個性や生きがい、やりたいことを専門職の視点から見つけだして伸ばしていきたいというところが共通の目標です。

子どもたちの課題への向き合い方
「子どもの“苦手”を遊びと達成感に置き換える仕事」

馬場さん
川岸さんとこんなふうにお話できる機会はなかなかないので、お聞きしたいことがあります。

僕が勤めていた前職の保育現場での話ですが、話したいことをうまく自分の言葉で表現できず悩んでいるお子さんがいらっしゃいました。親御さんからのご相談もあって、一度他の小児リハビリ施設での言語訓練を見学したことがありました。

しかし、訓練となると課題が多く、お子さんも大変なんですよね。僕らも理屈で言えば、専門のリハビリ施設で訓練をしてこども園でも継続してトレーニングをしていってもいいと思ういますが、子どもの立場を思えば、どれくらい園で介入しながらやっていくのが正しいのか、という点が気になっています。
川岸さん
子どもたちのリハビリは、周囲の大人からするとその子の苦手なことや下手なところを直したいとか上手にしてあげたいという思いが強くなりがちです。でも実は、そういったリハビリというのは、子どもにとっては苦しいこともあります。だから園では苦手なことに配慮して過ごしやすい環境作りをしていただく方が良いと思います。

例えば、たくさん覚えるのが苦手な子であれば、張り紙をちょっと張っておくとか。あと、得意なところをもっと伸ばしてあげようという考え方があります。僕の専門の運動機能のことでいうと、たとえば転びやすい子の中には、その子が経験せずに積み残してきた発達課題の中に理由が隠れていることがあります。そうなると、転ぶことに対して足の練習をするより別の機能発達に取り組めば改善されることもあるんです。

苦手なことを突き付けることはせず、なるべく子どもが楽しいと思えるように、達成感を得られるような時間になると良いですよね。
馬場さん
ということであれば、やはり楽しくというのは共通項ですね。

その子が持っている課題をどうやって遊びの中に落とし込むかを考えるのは我々の専門分野なので、小児リハビリのみなさんからいただいた情報をもとにその子の興味関心に基づいた活動を園での遊びに変換してあげればいいということですよね?
川岸さん
そのとおりです。
保育教諭さんは遊びのプロだと思いますので、僕も遊びのバリエーションについて学ばせていただきたいことがたくさんあります。リハビリの現場では練習してほしい項目は決まっていても、実際にそれを園や家で練習するというイメージは湧いてきません。

そういった意味でも、リハビリスタッフにはこども園を見学してほしいという気持ちが強いですね。リハビリでは一対一での関わりが多くなってしまうため、園での複数人の関わりの中ではこんなこともできるんだ、という発見があると思います。
馬場さん
遊びの知識や複数の子どもたちの気持ちをどう調節していけるか、日々の保育を通して子ども達と関わる中で、必要なテクニックや知識を蓄積していきます。そのあたりを保育教諭の視点からリハビリの方にフィードバックできれば、お役に立てるかもしれませんね。

先ほど川岸さんがおっしゃられていた子どもが積み残してきた課題についても、園では一人ひとりの成長記録を事細かに記録しています。そういった記録や資料もお互いに共有していくことができれば、より子どもたちの実態に合った練習方法が発見できるかもしれません。

お話を聞いていて、すごくヒントをいただけた気がします。やはりどちらも子どもに関わる仕事だけあって、考え方や想いがすごく似ていると感じてうれしくなりました。

保護者への配慮について
「家庭と施設が両輪になって子どもを支える体制づくり」

川岸さん
リハビリに初めて来られる子のお母さんはすごく不安や心配の気持ちが大きくて、育児でも子どもとどう関わって良いか分からないと感じている方が多いと感じます。リハビリの中で見つけた特徴や個性を伝えてあげると、子どもの行動の理由が分かって親子の関係や生活も良くなっていくんですね。お母さんの表情がだんだん変わっていくのが分かります。

私たちはお子さんのリハビリをしていますが、お母さんの気持ちも変えられるという点もやりがいです。
馬場さん
こども園では今、子育て支援の重要性について話す機会が増えています。お母さんと子どもの関わり方はもちろん、子どもの気持ちを代弁してお話をさせていただくということもあります。

一昔前だったら、家族や地域の人との関わりの中で学んでいく経験が環境としてありましたが、核家族化が進んでいる今では子どもと関わる時間が減ってしまっている分、一緒に経験できる時間も機会も少ないんですよね。
中にはご両親より保育教諭と関わる時間の方が長いという子も多いため、園としてもお子さんが今日一日何を楽しんで、どんなことに感動したかという情報はできるだけ多く伝えていきたいと思っています。
川岸さん
すごく共感できます。
経験については僕も常日頃から思っていて、便利な時代になればなるほど機会がなくなっているように感じます。移動ひとつにしても車に乗ればどこにでも行けますし、欲しいものも簡単に完成品が手に入ってしまいますから。

できないことにぶつかった時にそれをどう乗り越えるかについて試行錯誤するという過程は子どもにとってもお母さんにとっても欠かせない経験なんですよね。
馬場さん
本当にそのとおりだと思います。
お迎えに来られた保護者の方にもただその日に作ったものや活動の結果だけをお知らせするのではなく、そこに至るまでの過程でその子がこだわりを示した経過や行動にきちんと意味づけをしてあげることが一番大切だと思っています。

それってものすごく尊いことなんです。それが保護者の方にとっても子どもの成長を感じるきっかけとなり、喜びにもつながるでしょうし、家庭での遊び方や過ごし方について考えるヒントにもなるはずです。
川岸さん
行動を意味づけするというのは、専門職として本当に大切な役目ですよね。
ただ実際は、その子の特性として少しこだわりが強いだとか、ベタベタする感覚が苦手だとか、経験の一歩手前の段階でつまずいているケースもよくあります。

その場合は、子どもの苦手な部分を別の方法に置き換えてあげることで乗り越えられることもあります。そういったところでもこども園と連携していけるのかなと思いました。
馬場さん
家庭と施設が両輪になって子どもを支えるというのが大切ですよね。
保護者のみなさんがいい感情で子どもに向き合ってもらえるように、園としての取り組みを保護者のみなさまと共有していきたいと思います。

今後の連携に向けて
「法人のスケールメリットを最大限に活かす連携への期待」

馬場さん
連携の話になると、どうしても大人が主体となってしまいがちですが、子どもたち同士で交流を深められるともっと良いかもしれません。

例えば、こども園でも発達の面で課題を抱えている子がいまして……。子どもたちはすごく素直だからこそ、相手に対して傷つけるような言葉を使ってしまうことがあるのです。でも、世の中にはいろんな人がいて、どの人も素晴らしいという感覚を育てていきたい。これからの時代をつくっていく子どもたちですから、国や文化、性別、障がいの有無なども含めた“違い”を受け入れられる育ちは大切です。だからこそ、時には発達の面で課題を抱えている子と触れ合うことが、子どもたちにとって大きな学びにつながると思います。

実際に子どもたちは、違いを乗り越えて共に遊びたいという気持ちが強いんですよね。大人の方が構えてしまっていますから。その窓口を作っていくことも、私たちの大事な役目かもしれないです。和光会内にある施設同士だからこそ連携もしやすく、和光会だからこそのスケールメリットですよね。
川岸さん
おっしゃるとおりだと思います。
障がいを抱えていても、他の子どもたちと同じ経験をしてもらいたいというお父さんお母さんは多くいます。イスに滑り止めを敷くとか少しの工夫で活動に参加しやすくなったという報告もあります。

ですから、保育園や幼稚園の先生方にどうすればそういう子たちを受け入れてもらえるか、理解してもらえるかをいつも考えていますから、馬場さんのような方がいるととても心強いです。ぜひ相談させていただきたいです。
馬場さん
外部の機関だとどうしても弊害が出てくると思うので、そこは同じ法人の中にあるというスケールメリットを存分に活かして連携することができればいいですよね。子どもたちにとっても違いを受けとめる大切さを学べる環境が生まれると思いますし、園長とも相談し、前向きに話を進めていきたいと思います。

もちろんいきなり入園となると園側の体制を整えるための時間も必要ですし、心に傷を抱えているお母さんもいらっしゃいますから、そこも含めて幅広くケアをしていきたいですね。

リハビリの場合は直面している問題が大きいので、いろいろな意味で心に傷を負っているお母さんたちもいらっしゃいますが川岸さんはそういった方に対してどのようなケアを大切にされていますか?
川岸さん
そうですね、僕の場合は一人のお子さんに対してリハビリの時間枠が40分あるので、お子さんだけでなくお母さんと話すということもよくあります。他の人には相談できなかったり、不安を口に出せない方もいらっしゃるので、些細なことでも吐き出せる雰囲気作りや場を提供することで少しでも楽になってもらえたらと思っています。

また、子どもたちの変化は日々少しずつなのでなかなか気付きにくいですが、1ヶ月に1度、子どもたちに会う僕たちだからこそ気づける変化が実はすごくたくさんあります。そういうところをきちんとお伝えするように心がけています。
馬場さん
なるほど。
専門職としてはついついズバっと何か効果的なことを言ってあげなきゃならないと思いがちですが、同じ立場でお子さんの成長を見守るスタンスが大切ということですね。

こども園は複数担任制で、お母さんのお話を保育教諭がしっかりと受け止めつつ、お子さんにしてあげてほしいことを少しご提案させていただくというコミュニケーションの時間をできるだけ確保するようにしています。それを園の保育教諭全員で情報共有することで、一人の担任だけが問題を抱え込んで疲弊するのではなく、お互いに力を合わせながらチームで対応できるように取り組んでいます。

みんなで情報共有することによっていろいろなアイデアも生まれて、結果としてより充実した保護者支援の展開ができると思います。
川岸さん
チームが大事というのはすごくわかります。
ただ、なかなか日々の仕事の中で情報を共有する時間って取りにくかったりもしますよね。

そういったお話は、朝のミーティングや別の検討会などで話し合われているんですか?
馬場さん
大きな課題がある場合は、職員会議できちんと情報共有しています。
ただ、園としては些細なことであっても喋りやすい空気づくりを大切にしているので、若い先生でも思ったことを素直に話してくれていますよ。そういったチームワークはすごく大切だと思うし、園内だけでなく施設間でも同じようにSOSを発信し合える関係になれば素晴らしいことですよね。

組織全体が明るくいい連携をとっていけるのではないかという気持ちが強くなりました。今日こうして川岸さんとたくさんお話ができて「あ、これはいけるぞ!」と勝手に思っていました(笑)。2人で力を合わせて、まわりの大人も巻き込みながら連携に努めていきましょうね。
川岸さん
私も、すごくいい方がここにいる!と思いました(笑)。
連携の実現に向けて、これからますます前向きなコミュニケーションが生まれることは間違いないと思うので、今後もご相談させていただきます。よろしくお願いします!

ご相談・お問い合わせ

電話で相談する

医療・介護の無料相談なら
和光会地域包括ケアステーション

0120-545-513

メールで相談する