外国人の声を拾って
- 谷田本部長
- そもそも、なぜ「カンボジア人支援協会」を立ち上げられたのですか?
- スン陽子さん
- 縫製業の通訳兼生活指導員をしていた頃、強制労働のような扱いを受けていた外国人の声を拾っていくうちに今の形になりました。
- 谷田本部長
- 昔、そんな会社が岐阜にあるのをニュースで見た気がします。
- スン陽子さん
- 私も通訳するのがつらいほどでした。
- 谷田本部長
- そうでしたか。カンボジアの主な産業は、観光業ですか?
- スン陽子さん
- 観光業と縫製業です。日本の縫製業にカンボジア人技能実習生が多いのもそのためです。
カンボジア人技能実習生を帰国後の起業まで支援したい
- 谷田本部長
- なるほど。縫製の技能実習生は、帰国後、習ったことを仕事にできていますか?
- スン陽子さん
-
いえ、帰ると月1万5千円の生活に逆戻りで、結果的に
使い捨て状態になっています。圧倒的に教育が足りていない彼らには、起業の仕方がわからないのです。
- 谷田本部長
- もったいないですね。
- スン陽子さん
- JICA中部(独立行政法人国際協力機構)と共催で、パソコンのスキルを教える『在留外国人キャリアアップ大学』を開いているのも、在庫管理やスケジュールを組み立てられるからです。両国の生産性が上がりますし、起業まで支援して『技能実習で日本に行くと、こんなにいいことがある』って思っていただきたいじゃないですか。
- 谷田本部長
- そうですね。私も、当法人の技能実習生の帰国後の支援について悩んでいました。
- スン陽子さん
- 受講生にGDP(国内総生産)の表を見せて『あなたたちの国はすごく可能性があるのよ!』と言うと、目をキラキラさせてルンルンで帰りますが、現実は大変です。受講料は無料ですが、誰のための学校か分からなくなるので、うちは交通費を負担していません。すると、寒くなると途端に講座に来なかったり…。
- 谷田本部長
- 支援を受ける国も人も『自分ごと』として考えられない以上は、支援する意味がないわけですね。
- スン陽子さん
- でも、日本に『介護』で来ているカンボジア人実習生の満足度は高いですよ。介護のビザは厳しいので、高校や大学を出ている比較的教育レベルの高い子たちというのもありますが、受け入れ先の病院や施設の人が優しいそうで、製造業の子たちの感想とは全く違います。お正月や成人式に着物を着せてもらうなんて、製造業ではまずないので。
介護の制度設計を学ぶことで母国のパイオニア的存在に
- 谷田本部長
- ウチの技能実習生の母国にも介護施設がありません。帰国後の支援のヒントをいただきたいです。
- スン陽子さん
- 今はオンラインもあるし、日本を目指す子たちの指導者にはなれますね。社会福祉制度や戸籍制度がなく、税金をしっかり徴収できない国だと、介護保険の仕組みが分かる存在は貴重です。現地のパイオニア的存在になれますよ。
- 谷田本部長
- 介護の制度設計そのものを学んで帰ってもらう必要があるというわけですね。先を見据えた持続可能な話で、とても参考になりました。今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
- スン陽子さん
- こちらこそ、ありがとうございました。